動作分析のコツ

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「動作分析が苦手です。」
臨床実習で学生はほぼ全員そう言う。

「動作分析が得意です。」
そんな学生は見たことない。

そして実習指導者も恐らく、
動作分析を教えるのが得意な人はいないだろう。
動作分析の講義をして下さいと頼まれて、
自信を持ってできる人は
なかなかいないのではないだろうか。

さてこの動作分析、
意思決定をするために、
重要な問題解決過程であり、
理学療法の効果を左右すると言っても過言ではない。

しかし学生がこれだけ苦手という理由。
これにはどんな問題点があるのだろうか。
この部分には真摯に向き合う必要があると考えられる。

動作分析とは

動作分析が難しい理由として、
まず一番の問題は概念の曖昧さである。

人の動きというのは
実は多様で階層的なため何を指しているのかが、
理解しずらい部分がある。
そのため、教師、指導者によって概念の不一致が起こり、
それが学生を混乱させやすい要因の一つのように感じられる。
要するに皆が言うことが違うのである。

これは動作分析そのものが標準化されていない、
我が国の一つの難点であり、
それが故に相違が大きいと言う意見もある1)

人の動きの多様性と階層性

人の動きの多様性とは何を示すか。
これは仕事を指すのか、
スポーツを指すのか、
日常生活を指すのか、
はたまた基本動作を指すのか、
そして関節単位での要素的な運動を指すのか。

これだけ人の動きというのは多様性がある。
大きな枠組みと細かな枠組み。
どこを見るのかという視点が曖昧であれば、
見る側によって変わってしまう。

また階層性で見ると、
行為を見るのか、基本動作を見るのか、
要素的運動を見るのか、
心身機能や身体構造を見るのかでも変わってくる。

これだけの視点があるため、
定義や視点が曖昧でさらに人によっていうことが違う。
これは混乱しない理由を探す方が難しい。
これが動作分析の難しさの理由
と言って良いのではないだろうか。

動作分析の言葉の定義

言葉の定義を考えていくと
広辞苑では
「動作」は「事を行おうとして身体を動かすこと。
また、その動き。」とされ、
「分析」は「ある物事を分解して、
それを成立させている成分・要素・側面を
明らかにすること」とされる2)。
よって言葉の定義から要約すると、
「動作分析」とは
「事を行おうとしている身体の動きを分解して、
それを成立している成分・要素・側面を
明らかにすること。」と考えられる

学生とベテランの思考過程の違い

「臨床ではトップダウンを用いることが多い。」
これもよく聞く言葉である。

これはベテランになると、
基本動作や日常生活をまず確認し、
そこから関連する仮説を立て、
検査測定をしていく順序のことを指す。
トップダウンというのはTop down reasoningを指し、
日本語では演繹的推論と呼ばれるものである。

学生の場合は推論過程はその逆になり、
診断名から検査測定をして、
基本動作や日常生活を確認する順序となりやすい。
これはいわゆるボトムアップといい、
Bottom up reasoningを指す。
日本語では帰納的推論と呼ばれるものである。

しかし、それぞれの推論に弱点がある。
ベテランが用いる演繹的推論は、
的を絞ることができる仮説検証型である反面、
経験的な推論によって偏りのある推論となる可能性がある。

また学生が用いる帰納的推論は、
網羅的な情報収集をするため時間がかかり、
機械的に評価表を埋める作業になりやすい。
よって評価に時間がかかり、
患者さんの評判はすこぶる悪い。

さてそれぞれの弱点を補うにはどうすれば良いか。
これは双方を同時に行うことで解決される。
まずは演繹的推論の流れで、
基本動作や日常生活を確認し、
そして検査測定をする。
その仮説を検証するために
アプローチと効果判定をするが、
効果が出ない場合は、
帰納的推論に切り替えて、
他の機能に問題ががないかを確認する。

まずは情報収集

さて大まかに動作分析のことを述べていったが、
実際にどのようにやっていけば良いのか。
ここがいちばん大切である。

学生にとってはっきり言って動作分析は難しい!
この一言に尽きる。
見ただけでどこが悪いかわかるなんて、
それはもうベテランである。しかも達人の域である。

だからどれだけ見る以外の情報を得るかがカギとなる。
要するに動作分析以外の情報を得られるかで、
絞り込むことが大切である。

要するに動作分析のみで
すべてをわかろうとしないことである。
動作だけ見てどこが悪いかなんて、
達人の域の真似をしようとしたって、
無理という前提でどうするかを考える。

そうなるといかに情報を収集するか。
まずカルテ情報から診断名、病態、病歴を把握する。
これだけで大まかな障害イメージを想定できる。

そこから患者さんと会話をして、
社会的背景やニーズ、
患者さんに必要な動作や実用性を把握する。
これが特に重要。動作は環境によって変わる。
その人の目的となる動作は
ここをしっかり聞いてないと、
的外れな動作分析となってしまう。

この二つでどれだけ絞り込めるかが大切。
そして実際の動作分析に入っていく。

聴く

動作分析をするときには見ることに収集していると思うが、
見て得られる情報には限界がある。
カッコつけずに素直に患者さんに聴こう。
そうしたら、患者さんが教えてくれます。

「痛いのは右?左?」
「踏みしめたときと足を挙げるとき
どっちが調子悪く感じますか?」
「動きはじめと終わり頃どの辺りが辛いですか?」
「その時の症状は硬い感じ?それとも痛い感じ?」

これらの詳細な情報は見ているだけでは、
わからない情報も多い。
素直に聴くだけで、そんな貴重な情報を、
目の前で患者さんが答えてくれます。
しかも本人が直接いうのだから間違いない。

これだけで、どんどんポイント絞ることができる。
ベテラン並みに絞れ、
達人の域まで詳細な情報を聞き取れる。

動作分析は見ることだけでなく、
聴くことで随分と楽ができちゃう。
楽と言っても患者さんにとっても、
とても有効なので良い楽である。

正常に誘導する

正常とは何か。
という話になると長くなってしまうので、
ここでは割愛してざっくりとした話になる。

患者さんの動作を見て、
検査測定に入るが
さらにその検査測定の項目を絞り込む方法がある。

患者さんの行なっている動作は、
大抵の場合は代償動作である。
痛いのに痛い歩き方はしない。
1番痛くない歩き方、
その身体で1番楽な動き方をしていることが多い。

だから単純に正常な動作に戻すことが、
大切なのかというとそれは違う。
腰が曲がってるから腰を伸ばす指導をする。
膝が外に向いているから膝を内に向ける指導をする。
腰が曲がっているには曲がっている理由が、
膝が外に向いているには向いている理由がある。

ただそれは見ているだけではわからない。
そこから通常は検査測定で詳細に情報を収集していく。
ただ余分な評価も当然増える。
ではどうすれば良いか。

代償動作を正常に誘導したときに、
出現する症状を捉えることである。

「腰を伸ばそうとしたら、どうですか?」
「膝を内に向けたらどうですか?」

そのときに出る症状が理由である。
痛いから曲げている。
硬いから外に向けてしまう。
じゃあどこが痛い?
どんなふうに痛い?
どこが硬い?どんなふうに硬い?
随分評価項目はポイントを絞り込むことができる。

動いてない関節を見る

最後にもう一つ。
”聴く””正常に誘導する”という必殺技を伝えたが、
コミュニケーションがうまく取れない方もいる。
失語や認知症などで表情の読み取りはできても、
詳細な情報までは聞けなかったり、
話が別の方向にいってしまったり、
そういう時は見るしかない。

そして初心者で見やすいものとして、
他より動いてないところを見つける。
初心者は筋肉の動きまで想定して見ることは難しい。
そしてどの関節を見ればいいのかわからない。

一つの関節を見ていても、
運動は他の関節と連動して動く。
でもいくつかを同時に見るなんて、
男性はマルチタスクが苦手だ。

こういうときはまず動きてない関節を探す。
たぶん動作を見ていて、
「あれ?なんかおかしいな。」
という違和感は気付くことは多い。
しかし、どこがどうなのかは難しい。
そこで次に見る視点は、
どこの関節が動いてないかを見る。

右と左を比べてどうか。
若い人と比べてどうか。
他の人と比べてどうか。
動いていない関節があれば、
その周囲の関節は過剰に動いている。

動作を遂行するには、
一定の可動域が必要になる。
しかし、可動域が足りない場合は、
他の関節を過剰に動かし動作を遂行する。

動いていない関節がわかるからこそ、
動きすぎている関節も見えてくる。
まずは動いていない関節を探す。
そこから道筋を追って見ていけばいい。

まとめ

動作分析というのは学生にとっても
指導者にとってもなかなか難易度の高いものである。

その理由としては概念の定義が曖昧な点と、
多様性と階層性があるためである。

また推論の立て方にも学生とベテランで違いがある。
仮説を立てて検証する演繹的推論と、
網羅的に情報収集をする機能的推論。
それぞれの特性を知ることで、
ベテランと学生の互いの思考の共有が容易になる。

実際の動作分析のコツは、
まず情報収集をすること。
カルテや患者との会話がなければ、
見る部位も絞り込めない。

そして”聴く”、”正常に誘導する”、”動いてない関節を見る”
患者さんに”聴く”ことで、
どんどん的を絞ることができる。
“正常に誘導する”ことで、
問題となっている症状が浮き彫りになる。
“動いてない関節を見る”ことで、
他の関節との関係性が見えてくる。

動作分析は問題解決の意思決定をする上で必要不可欠である。
しかし、その難易度においては初心者にとってかなりきつい。
そのため、いかに楽にヒントを得るかがポイントである。

1)木村貞治 :理学療法における動作分析の概要.埋学療法19(8):
883-887,2002,
2)新村 出 (編):広辞苑 第5版.岩波書店,199.
3)McGinley JL, Goldie PA, et al: Accuracy and reliability
of observational gait analysis data: Judgments of push-
off in wait after stroke. Phys Ther 83(2): 146-160. 2003.
4) Miyazaki S. Kubota T: Quantification of gait abnormali-
ties on the basis of a continuous foot-force measurement:
correlation between quantitative indices and visual rat-
ing. Medical & Biological Engineering & Computing 22:
70-76, 1984.

Photo by Raychan on Unsplash

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ABOUTこの記事をかいた人

藤原大輔 岡山のクリニックで理学療法士として勤務。 "痛み"に対して 日常生活のコントロールの重要性を提唱している。