高齢化社会となり寿命が長くなる一方、
運動器の問題がピックアップされることが多くなった。
長年使っている関節や筋肉が問題を起こし、
痛みや筋力低下などから、
日常生活に支障を起こしてしまう状態である。
様々な運動や体操をして、
筋力を維持・向上しなければいけないと言われている。
ただ理想通りにいかないのが人間である。
“調子がよくなる”理由というのは複数の因子の結果であり、
どうすれば良くなるかというのは、
実はなかなか予測することは難しい。
“攻め”というのは多くの因子の影響の掛け合いで、
一つの因子のみではどうにもならないことも多い。
それに対してどうすれば”悪くならないか”というのは、
まだ予測を立てやすいものである。
いわゆる”守り”になるのだが、
スポーツでもまずは”守り”から学ぶことが多い。
“守り”はある程度セオリーが単純である。
“攻め”に関しては個人の能力、チームの状況、敵チームの状況、
天候、コンディションまたコンディションも細かく分けると、
睡眠状態、食事、排便、心理面など多くの要素が関係する。
こうしたものを全て合わせていくことは不可能に近い。
要するに運動器を高めることよりも、
低下させないことを考える方が
セオリーが立てやすいのである。
では運動器を低下させないために
気をつけることはどういったことなのだろうか。
運動器は同一肢位によって機能は低下する。
それは時間的持続によって
タンパク質の生成適応が生じる1)ためと言われる。
簡単に言えばその形で固まってしまう。
それを防ぐためには同じ運動や姿勢を続けるのではなく、
定期的に様々な方向に動くことが大切である。
関節の運動刺激が多様になることで、
望ましい様態を保つことができるである。
関節を20分以上屈曲させた場合、
回復に40分以上かかる2)と言われている。
これは軟部組織の変性によるもので、
一定の姿勢を1時間以上保つのは望ましくない。
まとめ
運動器の機能を保つためには、
運動によりよくしていくと考えるより、
同一肢位を避け様々な方向に動くことが大切である。
タンパク質の生成適応による軟部組織の変性により、
体が固まってしまった状態を作る。
1時間以上の一定の姿勢は望ましくない。
同じ運動・姿勢が続く状態では
健全な機能を維持するのは難しい。
様々な方向へ運動を起こすことが運動器を
望ましい様態に保つのに必要不可欠である。
1)Hebert R:Preventing and treating stiff joints. In
Crosbie J,McConnell J,editors:Key issues in
musculoskeletal physiotherapy, Sydney,1993,Butterworth-Heinemann
2)McGill SM,Brown S:Creep response of the lumbar
spine to prolonged full flexion, Clinical Biotech 7:43,1992
