“やる気がない”は血液検査をチェック

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何だか元気が出ない。やる気が出ない。
入院患者の離床を進める時に、
なかなか進まないことがある。

モチベーションが低いな。
やる気がないな。
そう判断する場合も多いと思うが、
実際にそうだろうか。

離床に影響する要因はいくつかある。
その中でも血液の生化学データは参考になる。

患者の状態によっては、
実際に身体が思うように動かない。
動くことを脳がストップしている場合もある。

ではどういった状態で、
離床を注意する必要があるのだろうか。

肝機能

肝臓は化学工場である。
ホルモンや栄養を作り有害物質を解毒化する。
臥位と比べると座位・立位は肝臓の血流量も減少するため、
倦怠感、脱力感などが生じやすくなる。
ただ糖代謝やアミノ酸代謝の観点から考えると、
筋肉の維持も重要となる。

食事や経腸栄養接種後の1-2時間は臥床安静を優先し、
離床を避ける必要がある。
また倦怠感や疲労感の有無、
表情の変化や冷汗の出現を確認する。

検査項目としてはGOT・GPT・LDH・TB・HBなど。

腎機能

腎臓は水分やミネラルのバランスや血圧の調整、
造血機能や老廃物の排出などの役割がある。

運動負荷は新陳代謝が活発になるため、
老廃物の産出が増加し、
腎臓への負担が増加する可能性がある。
そのため様々な身体症状の原因となる。

水分調節機能が低下した場合は、
浮腫を招きやすくなる。
また利尿が進みすぎると脱水になる。
また造血機能が低下した場合は、
貧血と血小板の機能低下が合併することもある。

自覚症状が乏しいため、
患者が無理をしすぎることもあるため、
データの変化を確認していく必要もある。

検査項目としてはBUN・Cr・
電解質の乱れ(ナトリウム・カルシウムの低下、
カリウムの増加)

血糖値

血液中のブドウ糖を示す。
食事による変動が大きいため、
通常は空腹時に測定する。

インスリンが不足すると上昇しやすくなる。
インスリンの不足はエネルギーを
送る機能の低下となる。

内臓や筋肉のエネルギー不足により、
運動持久力の低下を生じる。

運動療法によりエネルギー需要が増えると、
低血糖となり脳の活動性が低下する。
意識障害や昏睡のリスクもある。

低血糖症状はあくび・めまい・脱力感から、
冷感・動悸・吐き気・思考低下となり、
意識障害となる。
自覚症状には個人差があるため、
その人個人の低血糖症状を
確認することも大切である。

検査項目としては血糖値、
HbA1C(1−3ヶ月の平均)がある。

電解質

神経・筋肉の機能に重要な働きがある。
食事や排泄のバランス、水分のバランス。
薬剤の効果などの影響を受ける。

手術や感染によるものや臓器障害も
それらの影響に関わってくる。

神経や筋肉の収縮にはNa、K、Caが関係する。
それぞれ高すぎても低すぎても問題となる。
またClは血液を配給する上で重要な役割を果たす。
またMgは他の電解質の輸送促進や濃度調節に関わる。

検査項目としては
Na、K、Ca、Cl、Mgなど。

炎症

感染症や組織損傷の際、
産出された毒素を全身に
拡散しないために炎症反応を起こす。

炎症反応の際は酸素や栄養の消耗が激しく、
体力消耗につながりやすい。
38℃を超える場合は休養をとるようにし、
39℃を超えれば離床中止。
医師に連絡するようにする。

検査項目としては白血球、CRPなど。

出血傾向

血管内皮に接着・凝集する血小板か、
凝固させ止血する凝固因子
どちらかが問題が生じている。

少しの刺激でも出血や内出血が生じやすい。
臥床時の下側の仙骨や臀部に摩擦が生じやすい。
またヘッドアップ60°は
最も摩擦が生じやすいので注意が必要。

検査項目としては血小板、
フィブリン・プロトロンビン時間、
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、
FDPなど。

貧血

赤血球の数や質や形の減少をさす。
運動により筋肉や内臓の酸素量が足りなくなる。
そのため食事、排泄、医療処置の後などは、
離床を行わない方が良い。

検査項目は赤血球、ヘモグロビン、
赤色色素量など。

栄養不良

カロリー不足やタンパク質不足を示す。
肝機能、腎機能、糖尿病、
貧血、感染症によっても評価は変わる。
それぞれの検査値と組み合わせて、
考える必要がある。

離床により必要エネルギーが
増加する可能性がある。
体内のタンパク質が減少しているときは、
胸水、腹水、肺うっ血、
浮腫が生じている可能性がある。

検査項目はAlb、TPなど。

まとめ

離床を進める上で、モチベーションの影響は大きい。
しかし、ただ単にやる気がないのではなく、
身体状況が整っていない場合もある。

肝機能、腎機能、血糖値、電解質の他にも、
炎症、出血傾向、貧血、栄養不良がある。

血圧や脈拍以外にも、
疲労感や倦怠感、呼吸の状態、
頭痛、めまい、吐き気、冷感、
表情の変化など確認する必要がある。

「今日は何だかしんどいなあ・・・。」
と言われたときはそれらの症状を確認する。
また日頃から血液検査の検査項目を確認し、
あらかじめどのようなリスクが生じるのか
準備をしておくことが重要である。

1) 江口正信他:検査値ガイドブック第1版,医学芸術社;2003.
2)足立香代子:検査値に基づいた栄養アセスメントとケアプラン
の実際 第1版,チーム医療:2006.
3)櫻林郁之介他監修:臨床検査項辞典 第1版,医歯薬出版,2003.
4) 中原一彦他:広範囲血液・尿化学検査,免疫学的検査 第6版,
日本臨牀62巻(増刊号), 2004.
5) 土屋俊夫他:臨床検査の看護へのいかしかた 第1版,医歯薬出
版:1994.2)西崎統監修:早引き 検査値・数式事典,ナツメ社:2006.

Photo by Sime Basioli on Unsplash

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ABOUTこの記事をかいた人

藤原大輔 岡山のクリニックで理学療法士として勤務。 "痛み"に対して 日常生活のコントロールの重要性を提唱している。