筋膜をどう使う?

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筋膜はトレンドからメジャーとなった
といっても過言ではない。
ただ筋膜はがしや骨盤はがしなど、
キャッチの強い表現も目立ち、
ビジネス色が強くなっていることは
注意すべきところではあると思う。

知ってはいるものの
臨床上どう使えば良いのか、
どう考えれば良いのかといったところは、
難しいのではないだろうか。

筋膜は筋肉の膜といったイメージが強いため、
最近ではファッシアとも呼ばれている。
筋膜は筋肉だけでなく内臓や骨・脂肪など
多くの組織とつながりを持つ。

ではこの筋膜について。
そして臨床でどう扱えば良いのか。
筋膜を考慮すれば臨床は劇的に変わる。
そして今までの疑問がつながる。
そういった可能性を秘めている。

筋緊張と様々な症状

臨床上、機能障害を扱う時に
筋緊張というのは問題となることは多い。
筋緊張が高いため痛み、可動域制限、
筋力などの症状が誘発される。

そしてこれらの症状が日常生活を阻害し、
QOLを低下させる要因となる。
しかし、この筋緊張。
なかなか厄介なものでもある。

ストレッチやマッサージで緩むものもあれば、
緩まないものもある。
そして一度緩めたものがまた元に戻ることも多い。

使った覚えのないところが凝ったり
痛くなったりすることも多い。
実はこれらの症状に筋膜が関わっていることがある。

筋膜の性状

まずは筋膜はどういったものか。
よく鶏肉のなかなか切れにくい
スジなどと表現される。

しかし生きている筋膜は、
あんなにパサパサしたものではない。
もっとしっとりと粘り気があり、
蜘蛛の巣のような網目状に繋がっているものである。

筋肉には名前が一つ一つ付いていて、
それぞれが独立して動くわけではない。
筋膜とつながり塊となって、
いくつかが協調して働く。

一つの部位が緊張すれば、
他の部位にもその緊張は波及する。
内臓が硬くなれば
その周囲の筋肉も緊張する。

緊張した部位があると、
その周囲の筋膜も緊張する。
さらに引っ張られた筋も緊張する。

こうしたことから痛みのある部位が
原因でなく他の部位の影響を受けていることが多い。
例えば上腕二頭筋の痛みが同側の上部胸肋関節から。
後頭部の頭重感が下部頚椎から。
上腕三頭筋の突っ張りが腰椎椎間関節から。
臀筋やハムストリングスの緊張が仙腸関節から。
筋膜を介して離れた部位に影響を及ぼすことがある。

何が変化するのか

硬い部位が柔らかくなる。
果たしてそれは何が起きているのだろうか。

ストレッチという言葉が広まっているので、
筋肉は引っ張れば伸びると思う人も多い。
しかし大腿筋膜張筋などの筋を伸ばそうとした場合、
約60kg以上の力が必要になる。
ただ筋肉は損傷を伴いながら引っ張られる。
また損傷させずに伸ばすには1時間以上の時間が必要である1)。

熱などによる粘性の変化でゾルゲル反応が生じた場合、
温まった間のみ柔らかく、
冷えると元に戻ってしまう2)。

また圧をかけることによる圧電効果(ピエゾ電気)3)も、
損傷部の修復に影響することはあるも、
創傷治癒期間を考慮すると
即時効果があるとは考えにくい。

ではいったい何の影響で柔らかくなるのだろうか。
これは筋膜内にある神経系・血流の循環、
そして筋膜内の平滑筋が変化している4-6)ことなどが、
近年報告されている。

引っ張って伸ばしたり、
熱で粘り気がサラサラになったり、
圧電気で変化するのではなく、
筋膜内にある神経系や血流の循環、
筋膜内の平滑筋が変化しているのである。

よって組織そのものが
徒手によって変化するわけでないので、
強い力は必要なく
ましてや痛みを伴う必要もない。

心地良く感じる程度の圧力で、
十分効果は可能である。
そのかわり柔らかいタッチのため、
効果を確認しなければ患者は懐疑的となる。
アプローチする前の症状誘発動作を行い、
痛み、可動性、筋力を確認する。
アプローチした後に
それらの症状が変化するか確認し、
効果があったかどうか検証する。

効果判定が不安な場合は、
療法士がアプローチ前の筋緊張と
アプローチ後の筋緊張に変化が出ているか、
確認していれば安心して
効果判定を行うことができる。

評価のコツ

緊張している筋がある場合、
筋膜をたどることで
原因となる硬くなり引っ張っている部位を
見つけることができる。

緊張している筋があればその筋は
どこから引っ張られているか確認していく。
中枢側から引っ張られているか。
それとも末梢側から引っ張られているか。

緊張している筋の連結をたどる。
予測する組織が見つかればそこを触知し、
緊張している筋が緩むかどうか。
また筋出力が改善するかを確認する。

変化があればその予測する組織を緩める。
関節であれば関節モビライゼーション、
筋であればリリースを行う。

原因となる組織が緩めば、
そこから引っ張られている筋も緩む。
要するにその筋肉の緊張は、
他の組織に引っ張られていたから、
緊張していたと考えられる。

注意点

筋は引っ張って伸びるのではない。
緩むから柔らかくなる。
そのため刺激は強い必要ない。

引っ張っている原因の組織さえ確認できれば、
わずかな刺激で十分緩む。
ただ刺激が弱いアプローチでは、
患者も「そんな力で良くなるわけがない。」
と感じることもある。
そのため効果判定は必須となる。

アプローチ前に疼痛誘発動作を行い、
アプローチ後に確認をする。
可動域の変化を確認する。
筋力の変化を確認する。
これらのいずれかを行い、
小さな力でも緩むことを確認する。

まとめ

筋膜は表層や深層に繋がりを持つ。
そのため、関係なさそうなところに原因があるため、
ある部位を緩めると他の部分が緩むことも多い。

関節が緩むと周囲の筋が緩んだり、
また周囲の筋が緩むと他の筋も緩んだりする。
そのためこわばりの強いところを緩ませれば、
アプローチする部位も少なく時間短縮につながる。

ただ筋や筋膜は引っ張れば伸びるというものではない。
心地よい刺激によって緩み、
また日常生活で動かすことでその柔らかさは維持される。
身体の繋がりをもっと意識することで、
アプローチはまだまだ引き出しが増えると考えられる。

1)The thoracolumbar fascia: anatomy, function and
clinical considerations.F.H.WillardA.VleemingM.
D. Schuenke L. DanneelsR. Schleip
2)Robert Schleip; Fascial plasticity – a new neurobiological
 explanation: Part 1.
3)”On the Piezoelectric Effect of Bone”, Eiichi Fukada and
Iwao Yasuda, 1957 The Physical Society of Japan.
Robert Schleip; Fascial plasticity – a new neurobiological
explanation: Part 1.
4)The fascia of the limbs and back – a review.
Mike Benjamin.
5)Anatomy of the deep fascia of the upper limb.
Second part: study of innervation.
 Stecco C, et al. Morphologie. 2007.
6)Active fascial contractility: Fascia may be able to
contract in a smooth muscle-like manner and thereby influence
 musculoskeletal dynamics.Schleip R, et al. Med Hypotheses. 2005.

Photo by Volha Flaxeco on Unsplash

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ABOUTこの記事をかいた人

藤原大輔 岡山のクリニックで理学療法士として勤務。 "痛み"に対して 日常生活のコントロールの重要性を提唱している。