転倒と認知的プロセス

広告

Pocket

歩行を獲得することとともに、
重要な課題は転倒を予防することである。
高齢者の転倒は骨折を引き起こすとともに、
歩行に対する恐怖感から活動性が低下する
転倒後症候群の引き金となる。
身体的なダメージだけでなく
精神的なダメージも同様に負うことになるのである。

活動性の低下は体力の低下、可動域の低下、
自信の喪失と改善に時間がかかる要素が大きい。
受傷後早期から活動性を高めることが大切であるが、
転倒を予防すると言う観点も重要である。

高齢者の転倒に関して興味深いデータがある。
歩行速度を低速、中低速、通常、高速と分類した場合、
低速群と高速群において転倒が多かった。
また高速群は屋外での転倒、
低速群は屋内の歩行が多かった1)。

歩行には可動域や筋力などの、
機能的な要素が重要だと考えられるが、
このデータでは機能的なレベルの高い高速群が
低速群とともに転倒が多い。
内訳としては高速群は屋外歩行の転倒が多いため、
外に出る機会が多いのはあるが、
可動域や筋力だけでなく、
認知的プロセスも歩行において重要なことを意味している。

認知的プロセスとは高次脳機能における
予期的姿勢調節(APA)がその代表である。
空間と体を認識し歩行に最適な姿勢を調節する
無意識下における運動プログラムである。

要するに実際の体と頭の中の体を一致させることで、
次の動きを予測し最適な動作を導き出す。
通常の歩行ではこの認知的プロセスが正常に働くが、
何かものを持った時、いつも以上に急いでいる時、
何か他のことに心を奪われている時などに、
実際の体の動きと認知的プロセスに誤差が生じる。
実際に足が上がっていると思っているが、
現実の足は思ったよりも上がっていなくて、
つまづいてしまうというのがこのことである。

まとめ

歩行することは大切だが、
転倒のリスクも注意すべきである。
高齢者の転倒に関しては機能的なレベルのみが問題ではない。
認知的プロセスによる影響も注意する必要がある。
「思ったよりも足が上がっていなかった。」
ということは転倒後の患者の声として多い。
これはいつもと違う状況下で生じやすい。
何かを持っていたり、急いでいたり、
何か他のことを考えていたりがそれに当たる。
いつも歩くときに気をつけることが重要なのではなく、
いつもと違う動きの時こそ気をつけるべきであり、
なるべくいつもと違う状況にしないことが、
転倒予防の上で大切なのかもしれない。

1)Quack L et al:The nonlinear relationship between gait
speed and falls : the maintenance of balance independent
living , intellect , and zest in the elderly of Boston Study.
J Am Geriatr Soc 59:1069-1073:2001

広告

ABOUTこの記事をかいた人

藤原大輔 岡山のクリニックで理学療法士として勤務。 "痛み"に対して 日常生活のコントロールの重要性を提唱している。