炭水化物制限で血糖が上がる!?

広告

Pocket

低炭水化物ダイエット。
炭水化物の取りすぎは血糖を上昇させ、
インスリンの上昇を招き、
肥満や糖尿病などの原因になる。
というのは一般的に知られている。

理屈としては筋が通っている気がするが、
他の研究と比べると少し違和感を感じる。
これらのデータの矛盾点を見ていきたい。

米を食べると糖尿病になる

2010年の日本人研究者の論文で
話題になったものである。
食品摂取頻度調査によるもので、
5年前にご飯たくさん食べた人が
糖尿病になったと答えた人が多かったという1)。

細かく見てみると男性25,666名、女性33,622名。
1995年と1998年の調査の5年後に集計している。
女性のデータをみると、
1日当たりのご飯の摂取量が、
165g・315g・420g・560gと
4つのグループに分かれており、

米摂取量  人数  糖尿病
165g 6,593 78
315g 10,551 136
420g 13,376 212
560g 3,102 52

この結果により
人数あたりの糖尿病の割合が多かったのは
420gと560gの
摂取の多かったグループとなっている。
しかしこの結果、
女性は米摂取量と関係があったものの
男性ではその傾向が認められていない。

このような食品摂取頻度調査では
質問によるものとなるので、
「過去1年平均して普通の大きさの茶碗で
ご飯を1日何杯食べますか?」
というものになる。

食べた量がよくわからなければ
1食1杯と考え420gと答える可能性がある。
また「糖尿病かどうか」も自己申告なので、
自分で気づいていない場合、申告することはない。
健康意識の高い人は病院で検査をするが、
自覚症状がないため
意識の低い人は気づかない可能性もある。
また女性の場合は食べた量を過少申告することも多い。
こういった部分でデータの不透明さも懸念される。

コメの摂取は減っている?

国民栄養調査によると、
日本人の炭水化物摂取量は年々減っている2)。
1946年 1970年 2000年
炭水化物  80.5 67.1 57.5
脂肪     7.1 19.2 27.5
(%)
むしろ炭水化物は減っていて、
脂肪が増えている。

そして日本人はもともとコメをよく食べる。
しかしながら”コメを食べないと気がすまない”
という人は減っている3)。
1992年    2016年
71.4% 49.6%

農林水産省の食糧需給表による
コメ消費量も年々減少している4)。
1960年    2010年
約320g 約160g

このことを考慮しても、
日本人のコメを食べる割合は明らかに減っている。
にも関わらず糖尿病は増えている。
糖尿病の数は1997年から2007年の間に
約840万人増加。約1.6倍である5)。
コメが原因なら減少するはずである。

炭水化物を多く取ると血糖が下がる

実際のデータから読み取れるのは、
「コメを食べなくなった」ことと
「運動が少なくなった」ことである。

戦争をする国は糖尿病の死亡率が激変することは
世界に共通して認められている6)。
戦争をしても総摂取カロリーはあまり変わらないが、
食事の内容は大きく変わる。
炭水化物が増えて脂肪が減るのである。
こうした食事の変化が
糖尿病の死亡率の減少に関わる可能性がある。

炭水化物をとると血糖が上がり、
それに対してインスリン分泌が増加する。
そして肥満や糖尿病の原因になる。
なのに真実は逆になる。
これはどういったことなのであろうか。

炭水化物を制限すると、
耐糖能異常(IGT)というのが生じる。
簡単に言うとインスリンの効き目が悪くなる。

炭水化物が身体に入ってこなくなると、
栄養源は脂肪から得ようとする。
この脂肪をエネルギーにしようとするときに、
遊離脂肪酸(FFA)が発生し、
これがインスリンの働きを抑制してしまう。

要するに炭水化物中心の食事であれば、
少しのインスリンげ血糖を下げれたものが、
炭水化物を制限することで、
インスリンの働きが抑制されるため、
インスリンの分泌が過剰に必要になる。
そしてその結果、
膵臓が疲労を起こしてしまうのである。
これがインスリン抵抗性と言うものである。

これは古くはヒムスワースの論文から、
炭水化物を少なくとった人よりも
多くとった人の方が、
インスリンによって
血糖が下がりやすくかったと報告している7)。

また低炭水化物食による耐糖能の悪化は、
グルコース負荷試験前日の夕食で
関係することが明らかになっている。
夕食に炭水化物をとって負荷試験を受けた場合と、
炭水化物制限をして負荷試験をした場合で、
炭水化物制限をした人の方が、
糖尿病や耐糖能異常と判定される可能性がある。
この研究では双方にインスリンの分泌は
差がなかったものの、
インスリンの感受性は低くなっており、
さらに血中遊離脂肪酸も優位に多くなっていた8)。

まとめ

炭水化物制限は必ずしも血糖を減少させ、
肥満や糖尿病の予防になるとは限らない。

炭水化物を制限することで、
耐糖能異常を生じインスリン抵抗性が高まるため、
かえって血糖が減少しずらくなる可能性がある。

炭水化物イコール血糖の増加ではなく、
インスリン抵抗性も考慮することが必要である。

1)Nanri A, Mizoue T, Noda M, Takahashi
Y, Kato M, Inoue M, Tsugane S; Japan
Public Health Center-based Prospective
Study Group. Rice intake and type 2
diabetes in Japanese men and women:
the Japan Public Health Center-based
Prospective Study. Am J Clin Nutr 92:
1468-77, 2010
2)国民健康・栄養調査.厚生労働省
3)お米を1日に1度は食べないと気が済まない.
博報堂生活総研「生活定点」調査.2018
4)食糧需給表.農林水産省.2010
5)患者調査の概要.厚生労働省.2014
6)Himsworth HP. Diet and the incidence of diabetes.
Clinical Science 2: 117-148, 1935
7)Himsworth HP. The dietetic factor determining
the glucose tolerance and sensitivity to insulin of
healthy men. Clinical Science 2: 67-94, 1935
8)Kaneko T, Wang P-Y, Tawata M, Sato A. Low carbohydrate
intake before oral glucose-tolerance tests. Lancet 352
(9124), 289, 1998

Photo by Gardie Design & Social Media Marketing on Unsplash

広告

ABOUTこの記事をかいた人

藤原大輔 岡山のクリニックで理学療法士として勤務。 "痛み"に対して 日常生活のコントロールの重要性を提唱している。