急性症状と慢性症状

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整形外科領域において
慢性症状が出現する患者は意外に多く、
22.9%と言われ5人に1人、
約2300万人とも言われている。

身体的な症状はさらに社会的な問題も生じ、
家庭や仕事に影響を与えるほか、
うつや自殺、ロコモティブシンドローム、
10年生存率の低下など
多くの問題に影響を生じさせてしまう。
経済的損失は年間に3720億円とも言われる。

患者によるアンケートで、
「治療に満足をしているか?」に対して、
“不満がある”がなんと45.2%。
内訳としては
”痛みが取れない”
”納得する説明がない”
”理解してもらえない”などが挙げられる1,2)。
そして満足せずに医療施設を変更したが、
49%にものぼっている3)。

このような状況を医療従事者は
真摯に受け取れる必要はもちろんであるが、
医療において痛みという問題は
思った以上に難しいということを再認識する必要がある。

運動器の疾患は急性症状と慢性症状がある。
外傷によって筋肉や関節などの組織を傷めた場合、
時間とともに細胞が修復を行なう。

それによって急性期・亜急性期・
慢性期と移行し改善する。
しかし、慢性症状が続くこともあり、
つっぱり、重だるさ、コリ感、しびれ、
痛みなどの症状が持続する。

実は急性症状と慢性症状のメカニズムは
別物と理解しておく方が理解しやすい。

急性症状

一般的に言われる痛みのメカニズムはこれにあたる。
外傷などで組織を傷めているため、
組織の修復を待つことが基本である。
損傷部位へのストレスを最小にすることが大切なので、
痛みの出る姿勢や動作を避けることが基本である。

組織は表層から治癒していき徐々に深層も治癒される。
表層には動く筋肉が多く、
深層には支える筋肉が多いため、
はじめのうちは動いた時に痛いが、
修復が進むと同じ姿勢で痛みが出てくる。

薬や湿布などは生活する上でストレスとなる
痛み症状を緩和するもので、
治癒を促進するものではない。

近年では痛みを感じ続けることで、
脳が痛みを感じやすくなり
慢性痛の原因となることがわかっており、
痛みを感じないようにすることも大切とされる。

また2日以上安静にすることは治療にならないとされる。
これは組織の修復を考えると矛盾するのだが、
安静にすることによる長期的な弊害の予防が大きい。
安静が長期化すると身体の関節や筋肉が硬くなる。
それに伴い筋力や体力が減少、
結果的に自信の喪失など回復を困難なものにさせる。

急性期に手助けするとすれば、
傷めている筋肉や関節の周囲の可動域を改善し、
運動時に負担をかかりにくくすること。
そして痛みの出ない動き方を指導することが可能である。

慢性症状

通常組織の修復や3ヶ月経過すると終了する。
傷んだ組織の修復過程が終了した状態である。
しかし、その後もなんらかの症状が
持続するという訴えは多い。
22.9%の5人に1人はそのような症状に悩まされる。

患者はうまく治っていないと思い、
他の医療施設に変更したり、
なんらかの良くなる方法がないかと試す。

ここでポイントになるが、
慢性症状の原因が組織の損傷にないことである。
いわゆる傷めている状態ではなく、
修復後の柔軟性の低下であり、
硬くなっている状態なのである。

修復した組織はより強固に繋がろうとするため、
外傷する前の状態より柔軟性が低下する。
また痛い部位をかばうことや、
以前と違う生活スタイル(活動しなくなるなど)が
定着していることなども要因に挙げられる。

要するに硬くなっていることが問題なので、
動くことが大切になり、
以前と同じように活動しない限り、
身体は以前の状態に戻りようがない。

そのため痛いのは身体の奥のどこが悪いのかではなく、
身体の外側の生活に目を向ける必要がある。
日常生活による習慣を見直すことが重要なのである。

慢性症状は動いたから傷めたのではなく、
動かないから硬くなっている。
症状が出るのはどの時か?
テレビを見ている時、
仕事でパソコンをしている時、
草抜きをしている時、
畑作業をしている時。
どれも手足は動いてそうだが、
実は背骨・骨盤・股関節と
それに付着している筋肉は支えていることが多い。
支える時間が長いから
身体は硬くなってくれているのである。

まとめ

痛みは外傷時の急性症状だけでなく、
傷めていないのに症状が出現する慢性症状がある。

急性症状は傷めているので、
時間による修復が重要である。
ただ安静は長期的には
慢性症状の原因となるため、
痛みの出ない範囲で動く。
薬や湿布で痛みを緩和しつつ、
傷めている部位以外の周辺の可動性を増やしたり、
痛みの出ない動き方を覚える。

慢性症状は傷んでいるのではなく、
硬くなっていることが原因である。
そのため動いて活動性を高めることが大切である。
背骨・骨盤・股関節付近は動いているようで、
支えていることが多いので、
同一姿勢はもちろんのこと、
同じ動作を繰り返す作業などは、
硬くなりやすいことを留意する必要がある。

1)慢性疼痛患者調査研究会.慢性疼痛患者調査
-疼痛有訴率および受診状況等に関する調査-
調査結果報告書.2009;1-16
2)松平浩ら.ペインクリニック 2011;32(9):1345-56
3)Nakamura M,Nishiwaki Y,Ushida T,Toyama Y.
Prevalence and characteristics of chronic
musculoskeletal pain in Japan.J Orthopedic
Sci 2011;16:424-32

Photo by Max Rovensky on Unsplash

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ABOUTこの記事をかいた人

藤原大輔 岡山のクリニックで理学療法士として勤務。 "痛み"に対して 日常生活のコントロールの重要性を提唱している。