問題点抽出のポイント

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リハビリテーションにおける
問題点を捉えるのは意外に難しい。
特に学生の実習中は大変である。
教える方もどこまでこちらの考えを伝えるか、
学生の考えを尊重するか。
迷うことは多いと思う。

ではこの問題点の捉え方。
どのように考えたらいいのだろうか。

全体の捉え方

リハビリテーションにおける
問題点の難しいところは、
問題の階層性にあるのではないだろうか。

社会的側面という
その人やその周りにある大きな枠組みから、
そこにつながるスキルである能力的側面。
そしてそれを構成する機能的側面。

この3つの次元の違う階層を捉えるとともに、
それをつなげていくことが必要である。

社会的側面と能力的側面の一部は、
医療者にとっては質問して聞き出すしかない。
要するに患者そのものしか知らない情報である。

問診や情報収集をいかにしていくかが、
重要なポイントである。

そして能力的側面の一部と機能的側面は、
療法士が確認していくこととなる。
専門的な部分の確認となるので、
患者には見えないものである。

この社会的側面から能力的側面、
そして機能的側面を患者側と医療者側で合わせて、
初めて目標設定が決定することになる。

患者の求めるニーズが実現可能なものかは、
改善可能な機能なのかどうか。
例えば骨折している状態で、
明日の試合には出たいとなっても、
機能的な改善は困難となる。

その場合は相手と話し合い、
妥協案を提案することで目標の修正が必要である。
その人にとっての試合はどういうものなのか。
その人の価値観や思想から優先順位、
その試合に対する役割や意味。
そこからどういった能力が要求されるのか。
別の役割としての存在意義はあるのか。
こういったところは患者に聞かなければわからない。

やむおえず応援にまわること。
そういう選択肢も提示する必要がある。
また次の試合に目標を定めることで、
今できることを提案するというのも、
考え方としてある。

いずれにしろ患者の価値観や思想、
優先順位から提案は変わっていくことを
しっかり認識する必要がある。

社会的側面

まず患者と会話をすることで、
どんな人間性の持ち主なのか把握していく。
せっかちなのかのんびり屋なのか。
どうことに重きを置いて、
どんなことが好きでどんなことが嫌いか。

家や仕事ではどういった役割で、
どういう考えを持って関わっているのか。
社会的側面は会話をしなければ
見えない部分は大きい。

またその人の周りの環境を把握することは、
周りの介助や援助をどれだけ得られるかを
確認するためにも重要である。

そしてどんなことが不安なのか
という精神面の確認と、
どんなことが困っているのか
という現実面の確認が必要である。

現実面の改善ができたとしても、
精神面の改善ができていなければ、
アプローチのパフォーマンスは低下する。

患者がどんなことに不安を持っているのか。
身体のパフォーマンス改善とともに、
精神面の改善も考慮する必要がある。

能力的側面

社会的側面が把握できたら、
それを元に能力的側面を把握していく。
例えば「歩きたい。」と訴えたとする。

「そうか歩行能力を改善すればいんだ。」
ということではない。
その人にとっての歩くとはどういうことなのか。
それを社会的側面を元に把握する必要がある。

杖を使うことも抵抗はないのか。
屋外と屋内どちらの歩行に重きを置くのか。
そもそも患者はどこを歩くことが多いのか。

買い物に行く時?それとも散歩する時?
家の中だけを歩くことが多い?
買い物に行くなら家からどのくらいの距離?
横断歩道はあるのか?
坂道や階段はあるのか?
どのくらいの時間で途中に休憩はできるのか?

歩行能力といってもその人の生活によって、
必要な能力は随分と違ったものになる。
それによって目標設定は変化するし、
当然、評価する項目や
アプローチする内容まで変わってくる。
能力的側面は社会的側面が把握できるからこそ、
具体的な条件が把握できるのである。

また「特に困ることはない。」
そう言われることも少なくない。
入院患者の場合、
病棟でのADLは自立していれば、
困ることはないと答えられる場合もある。

その場合は何かやりたいことはないか。
というポジティブクエッションにすることで、
目標となるものが明確になることも多い。

またはADLに問題がないならAPDL。
そしてそれもクリアできているなら、
仕事そして趣味と
段階的に質問の視点を上げていくのも手である。

ADLでは階段や入浴などがクリアできれば、
おおよそ問題なくなることが多い。
どちらかというと可動性が鍵になる。

APDLになると生活関連動作になるため、
調理や掃除など持久力が必要となる。
姿勢を維持するための耐久性には、
四肢の可動性だけでなく、
体幹や骨盤も考慮したものがより必要となる。
ただ自分の生活に関わることなので、
痛みや疲労があれば
自分のペースで休憩は取りやすい。

その点仕事になると、
自分のペースでは休憩は取れない。
より耐久性が必要になってくる。
どの姿勢や動作で症状が誘発されるのか。
それを回避するためには
どういった姿勢や動作が必要なのか。
そしてその姿勢や動作を容易にするための、
機能には何が必要か考える必要がある。

趣味になると好きなことになるため、
痛みを感じにくくなってしまう。
オーバーユースのリスクが大きく上がる。
こういった意味では仕事よりも、
コントロールが難しいものになる。

機能的側面

社会的側面と能力的側面が把握できて、
はじめて機能的側面の把握となる。
トップダウンシンキングになると、
患者から得られる情報によって、
必要な評価を絞り込むことができる。

どの能力が必要で、
その能力を達成するために
必要な機能は何なのか。

そのかわり先入観が入ってしまうと、
総崩れとなるリスクがある。
患者という人間性をどのように把握するのか。
質問と確認を繰り返しながら、
自分の中に先入観がないのか、
客観的に見ているかどうか。
確認していくことが大切である。

そして機能的側面の難しいところは、
その項目の多さにある。
どの阻害因子が能力に影響を与えているのか。
これはある程度の知識と経験がなければ、
把握することは容易でない。

予後予測ができるからこそ、
阻害因子の優先順位も捉えることができる。
論文によってどのような
アウトカムが得られているかも参考にできるものの、
目の前の患者にそれが当てはまるかどうかは、
正直なところはっきりとはわからない。

そこで阻害因子の可能性の高いものから、
絞り込んでいくのも有効である。

まずは痛み。痛みがあると可動性も筋力も、
全てのパフォーマンスは得られなくなる。
評価結果も痛みがあるのとないのでは、
数値は全く違ったものになる。
要するに痛みは阻害因子の中では、
最も優先順位として高いものになる。

次に可動性。
可動しない関節は筋力も発揮されない。
筋力は可動範囲の中間付近で最も発揮される。
可動域が狭ければ必要な動作において、
筋力が発揮されない場面が増えてくる。
また筋は伸びすぎても縮みすぎても発揮されない、
力張力曲線というものがある。
痛みと可動性が改善されて、
はじめて本来の筋力は発揮できる。

筋力。理学療法士の場合、
筋肉について知識があるがゆえに、
それを問題だと決めつけてしまう傾向が強い。
先ほど述べたように筋力が発揮されるには、
痛みと可動性に問題がないことが条件である。
痛みと可動性を改善することができれば、
筋力増強訓練を行う必要なく、
筋力は向上することになる。
これは本来筋力はあったものが、
痛みや可動性の阻害因子の影響で、
筋力が発揮されなかったということである。

最後に心因性。
心因性をはじめから疑うと、
全ての評価において先入観が入ってしまう。
また中枢神経に問題がある場合、
中枢神経に対するアプローチより先に、
痛みや可動性、筋力といった
ハード面のアプローチから行うことも有効である。

神経がうまく働いても関節や筋肉が
硬くて動かなければパフォーマンスは得られない。
まずはハード面を改善して、
それからソフト面を改善するとスムーズに、
問題の影響を把握することができる。

機能的な側面を評価することで、
問題が改善できるかどうか。
どの程度の時間が必要なのか把握できる。

それによって目標は具体的なものになり、
評価を元に患者に説明することになる。
患者の希望通りに進められる場合もあれば、
希望とは違ったものになることもある。
できるだけ希望に添えるような代替案を、
その方の人間性に合わせて提案することも、
私たちにとって大切な役割である。

まとめ

問題点を捉えるには、
社会的、能力的、機能的と3つの側面がある。
その中でも社会的側面と能力的側面の一部は、
患者に聞かなければわからない、
価値観や優先順位、
その方の社会や家庭での役割といったものがある。
それを把握してはじめて能力の条件が明確になる。

能力の条件が把握できれば、
必要な評価はある程度絞り込める。
その中でも優先順位は
痛み・可動性・筋力・心因性の順。
多くの阻害因子がある中、
優先順位を立てることは難しい。
基本的にはこの順で考えていくことで、
シンプルに思考展開が
行うことができるのではないか。

Photo by Annie Spratt on Unsplash

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ABOUTこの記事をかいた人

藤原大輔 岡山のクリニックで理学療法士として勤務。 "痛み"に対して 日常生活のコントロールの重要性を提唱している。